槍ヶ岳〜南岳〜大キレット〜北穂高岳

2010年秋大キレット越え

槍ヶ岳 ヤリガタケ 標 高 3180m 日本百名山

山 域

北アルプス
大喰岳 オオバミダケ 標 高 3101m 標高百座

山 域

北アルプス
中岳 ナカダケ 標 高 3084m 標高百座

山 域

北アルプス
南岳 ミナミダケ 標 高 3033m 標高百座

山 域

北アルプス
北穂高岳 キタホタカダケ 標 高 3105m 標高百座

山 域

北アルプス
登 山 記 録
登山月日 2010年9月18日〜9月20日
登山経路 9/18 新穂高5:00〜穂高平小屋6:05/6:15〜白出7:00〜チビ谷7:50/8:00〜槍平小屋9:25/9:45〜千丈沢乗越分岐11:45〜飛騨乗越13:30/13:45〜槍ヶ岳山荘14:00/14:20〜槍ヶ岳14:50/15:00〜槍ヶ岳山荘15:20(泊)

9/19 槍ヶ岳山荘5:15〜大喰岳〜中岳6:15〜南岳7:40〜南岳小屋7:50/8:00〜長谷川ピーク9:30〜飛騨泣き10:05〜北穂高岳11:45/12:30〜涸沢小屋15:05(泊)

9/20 涸沢小屋6:35〜本谷橋7:35〜横尾8:30/9:15〜徳沢10:15〜上高地(B・T)12:00/12:05=バス=平湯12:50=バス=新穂高13:20
行動時間 第1日目 10時間20分
第2日目  9時間50分
第3日目   5時間30分 (上高地まで)    合計(休憩時間を含む)
天  候 第1日目曇・晴 第2日目晴 第3日目雨/曇
メンバー 山友 ほろしり氏と2人

情  報

アクセス 新穂高までは問題なし
トレイル 槍ヶ岳山荘までは9時間の長丁場
槍〜南岳 3000mの雲上のプロムナード
南岳〜大キレット〜北穂高岳 厳しい岩稜地帯を行く
北穂高岳〜涸沢カールも荒れた道が続く
涸沢カール〜横尾〜上高地 人気のトレイル
水場・トイレ それぞれの小屋にある
その他 北アルプス随一の岩稜地帯

山行記

第一日


一日目の中間点槍平小屋で一息入れて飛騨沢に入る


飛騨乗り越しに着き槍ヶ岳山荘に荷物を下ろし穂先に向う

槍の穂先に立つ


霧の穂先を下りると槍ヶ岳が姿を現した

北海道の山友ほろしり氏を槍ヶ岳〜西穂高の岩稜地帯を案内する山行である。
ヘッデンを点けて夜明け前の5時には新穂高の駐車場を出る。穂高平の小屋で簡単な朝食をとり車道が延びる白出沢には2時間ほどで到着した。穂高岳山荘への登山口でもある白出からは本格的な登山道に入り、飛騨沢に沿って高度を上げて行く。チビ谷・滝谷・南沢などと穂高連峰から流れ下る沢が丁度良い休憩ポイントであり、その都度水分補給をしながら進む。南沢から少し上がると傾斜も緩み槍平の小屋に到着した。新穂高〜ここまで4時間半、丁度槍ヶ岳までの中間点というところだ。20分ほどの休憩を取り腹ごしらえをする。
槍平を過ぎ標高2250m地点の最終水場付近までは快適に歩くことが出来るが水場を過ぎるとゴーロの急坂が続く。そして樹林帯を抜けると「千丈沢乗越分岐」に着いた。標高2500mを越えたここまで槍平の小屋からは2時間ほどである。分岐から上はざれた道をジグザグ切りながら登る。先を行く登山者が良く見える。標高差100mに一回休憩というインターバルで登るのであるが最初の内は一回に150mくらいは登れる。しかし2800mを過ぎると息が続かなくなり、ペースががくんと落ちてインターバルも短くなる。先が見えれば急ぐことは無い。
千丈沢乗越分岐〜標高差500mの標高3000m超の稜線「飛騨乗越」には1時間45分ほどかけて登りつくことが出来た。残念ながらガスの中であった。飛騨乗越から更に15分ほどで槍ヶ岳山荘に到着した。新穂高からは丁度9時間の所用タイムであった。
小屋に荷物を下ろし空身で槍ヶ岳山頂をめざす。いつもは渋滞の山頂であるが今回はそれほどの事も無く順調に山頂に立つことが出来た。私は5回目であるがほろしり氏は初めての山頂で感激である。しかしガスで展望は無く全く期待はずれの槍ヶ岳ではあった。記念写真を撮って山頂を辞する。
登りよりも時間をかけて肩まで下るとガスが切れて山頂が姿を現し、登山者の歓声が山に響くのであった。小屋前のテラスで穂先を眺め、槍沢を登ってくる登山者を見ながらビールで乾杯する。
小屋に戻って自炊室で焼酎などを飲みながら自炊して夕食を取った。連休の為小屋は大勢の登山者が詰め掛け7人部屋が定員一杯で殆ど睡眠が取れなかった。


第二日目


夜明け前の5時15分に小屋を立つ


中岳・南岳と槍ヶ岳が遠ざかる


南岳山頂〜笠が岳・穂高連峰

殆ど眠れない槍ヶ岳山荘の夜であった。だから私は眠れなくても気兼ねなく過ごせるテント泊のほうが良いのである。しかし眠れられなかったからと言えゆっくりしているわけには行かない。4時過ぎには起きて自炊場でお餅入りラーメンを作りお腹に流し込む。とても口に入れるほどの空腹感は無いのだが、途中でシャリバテを起こすわけには行かないのである。まだ明けやらぬ5時には小屋の玄関に出てご来光を見に部屋を出た登山者を掻き分けて出発の準備をする。玄関を出ると槍の穂先にヘッデンのライトが続いていた。小屋前のテラスにも多くの宿泊者がご来光を待っていた。私達は真っ黒な槍ヶ岳をバックに写真を撮った後、槍ヶ岳山荘を出発した。テント場も夜明け前にもかかわらず撤収に忙しそうだった。
飛騨乗越に下ると満員のテント場から逃れてきた者が3張テントを張っていた。そして20分ほどで大喰岳に登り返すと、「キャンプ禁止」の看板の前で、テントを張るものがあった。昨日のテント場の混雑では致し方ないところであろうかと思う。槍ヶ岳山荘のしたの殺生ヒュッテのテント場も満員のようだ。昨日の疲れが残り、ピッチは上がらないが1時間ほどで中岳まで歩く。休憩を取っていると後続が追いついてきた。とにかく休憩インタバルを短くして疲れを感じる前に休みを入れることにする。天気は風は強いがまずまずで崩れる心配が無いので安心だ。
南岳への登山道は中岳を大きく下ってゆく。ここも天狗原分岐を過ぎた辺りで休憩を入れ、南岳には中岳から1時間半ほどかけて到着した。槍ヶ岳が遠くになった分、南岳小屋の先には穂高岳連峰が大きくなってきた。南岳小屋は10分ほど先であった。小屋前でパッキングを確認し、ステッキをザックにくくりつけ、ヘルメットを被る。いよいよ大キレット越えである。

南岳小屋から少し上がり、大キレットへのザレタ道に入る。そして鎖の付いた岩場を下って行く。20分も下ると一息つく場所に立ち、下ってきた道を振り返ると南岳のドームが被さるようだ。そして前方を見ると大キレットの全貌が良く見えて、北穂高岳の大岩壁が行く手を阻むように立ちはだかっているのである。慎重に慎重に進む。軽い荷の縦走者が次々と追い越して行くが少しもあわてることは無い。キレットの底部はアップダウンの岩場が続くがそれほど厳しいところは無い。随所で休憩を取りながら進むと長谷川ピークへの登りに掛かる。随分と高度差を感じるのだが歩いてみるとそれほどでもなかった。長谷川ピークは狭い岩稜の上で何人も立ち止まることは出来なかったが、周囲を歩く登山者がカメラに収めてくれた。
ここからが大キレットの核心部である。長谷川ピーク〜やせた馬の背のナイフリッジを慎重に進む。北穂高岳から来た縦走者と鎖場を譲りながら行き交い、岩場を大きく下ってA沢のコルに下る。肩で息をしながら呼吸を整える場所である。見上げると垂直の岩場のルンゼに先行した登山者が張り付いていて今にも降って落ちてきそうな恐怖感を感じる。「本当に、あそこを越えて行けるのだろうか」と思う。単独行の登山者と私達2人が先を譲りあいながらも6人ほどの固まりになってルンゼに取り付く。皆息せき切って登る。100mほどの高度を30分以上かけて登りきると、岩稜をトラバースする。小さな鎖場を過ぎると「飛騨泣き」の手前のバンドになる。腰を下ろして休める場所で、ほろしり氏と一息入れる。後続の単独行氏が「オレは71歳だが昨日は新穂高〜6時間で槍ヶ岳山荘に入った。今日は槍ヶ岳山荘から4時間でここまで来た」と言いながらひょいひょいと岩場を越えて先を行った。
「飛騨泣き」の難所には鎖と鉄梯子が下がっていたので難なく乗り越えることが出来た。その先はトラバース道となるが割合と安心して歩ける道である。そして頭上に北穂高岳の小屋が見えてくると100mの直登となる。重いザックを担ぎ、喘ぎ喘ぎゆっくり登る。南岳小屋を出て3時間40分ほどかけて大キレットを踏破して北穂高小屋前のテラスに登りきった。ほろしり氏も私も疲労困憊であるが達成感には満ち溢れていた。
テラスで昼食をとりながらこれからの行程を相談する。
予定の涸沢岳越えて穂高山荘に入るには疲労が大きすぎて無理と判断するのであった。

大キレットの写真集


南岳小屋〜大キレットを下る


下ってきた南岳のドームを振り返る


これから歩く大キレットの全貌


大キレットの中間点長谷川ピーク


長谷川ピークの馬の背の難所


A沢のコルから見上げるルンゼ


ルンゼを登りきり岩場をトラバース


同じく


ルンゼの途中から見る長谷川ピーク


北穂高小屋まで後少し


最後の岩場を見上げて


漸く大キレットを踏破する


北穂高岳山頂で

涸沢カールに下る

北穂高岳山頂を踏んだ後、潔く涸沢カールへの道に入る。当初予定の西穂岩稜踏破も断念したのである。しかしこれが見事な判断で有ったことを明日知るのである。涸沢カールへの下りのザレ場とゴーロの道も厳しいもので何回も休憩を挟みながら北穂山頂〜2時間半かけて涸沢小屋に下った。涸沢小屋で宿泊手続きを済ませた後、テラスで自炊をする。前穂高岳と眼前のカールにカラフルに開くテントを見ながらビールと焼酎で心地よい酔いが回るのであった。涸れ沢小屋は布団一枚に一人と言う余裕のスペースを確保できてゆっくりと休むことが出来たのである。

涸沢小屋で

 


第三日目


雨の涸沢小屋を出る
 
雨に煙る涸沢カール


横尾に下り上高地へ


新穂高の深山荘で汗を流す

涸れ沢小屋の朝は想定外の雨であった。北穂高岳に登り、奥穂高まで縦走を目論む同宿者もため息をついている。これでは昨日西穂山稜縦走を諦めてここに下った私達の判断は結果的に良かったと言うものである。判断の幸運を喜び、上高地へ下山の準備に掛かる。
自炊室になっている売店のテーブルでカフェオレを飲みながらパンなどをかじって朝食とする。小屋の外に出ると雨は小降りなから降り続いている。嘆きのため息が漏れるテント場を下り、カールを見上げて名残の写真を撮った後、急ぎ足で登山道を下る。本谷橋までは丁度1時間、横尾までも1時間弱で下った。横尾に下ると雨は止んだ。ベンチでうどんを作り腹ごしらえする。
上高地までの10キロ余を2時間50分ほどかけて歩き、バスターミナルで切符を買い求めると待つ間もなく、平湯行きのバスに乗ることが出来た。平湯のバスターミナルでも待ち時間無しの新穂高行きのバスに乗ることが出来、新穂高の駐車場には13:20に到着した。駐車場の蒲田川の対面にある深山荘の露天風呂で3日間の汗を流し、安房トンネルを抜けて塩尻市内のほろしり氏の宿泊ホテルには明るいうちに着くことが出来た。


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