荒川岳(中岳・前岳)・悪沢岳・千枚岳

悪沢岳 ワルサワダケ 標 高 3141m 百名山 山 域 南アルプス
丸山 マルヤマ 標 高 3032m 3000m超峰 山 域
千枚岳 センマイダケ 標 高 2880m 2000m超峰 山 域
マンノー沢ノ頭 マンノーサワノカシラ 標 高 2515m 2000m超峰 山 域
登 山 記 録
登山月日 2017年8月12日〜8月15日
登山経路 8月12日
畑薙ダム駐車場(14:30)〜バス〜椹島(15:30)
8月13日
椹島ロッジ(6:20)〜滝見橋〜吊橋(6:50)〜小石下(9:10)〜林道〜清水平(10:40/10:55)〜駒鳥池(13:30)〜千枚小屋(14:25)
8月14日
千枚小屋(5:20)〜二軒小屋分岐(5:50)〜千枚岳(6:20)〜丸山(7:00)〜悪沢岳(7:35/7:50)〜千枚岳(9:00)~二軒小屋分岐(9:25/9:35)〜マンノー沢ノ頭(11:00)〜二軒小屋(14:20)
8月15日
二軒小屋(6:00)〜蝙蝠尾根登山口付近彷徨〜二軒小屋(8:40/9:30)〜椹島(12:30/13:10)〜バス〜畑薙駐車場(14:15)
行動時間 1日目  2日目 8時間5分 3日目 9時間 4日目 7時間 合計 (休憩時間・ロスタイム含む) 
天 候 1日目 曇 2日目 曇 3日目 晴 4日目霧雨
メンバー 親子二人連れ登山隊
情   報
アクセス 畑薙ダム駐車場まで舗装道路
トレイル 千枚小屋までは緩い勾配の快適トレイルが続く 千枚岳から悪沢岳は岩稜帯もある 二軒小屋までは快適トレイルも2100m以下は急坂下り 二軒小屋〜椹島試練の10キロの林道歩き
水場・トイレ 各小屋と千枚尾根の清水平で水取れる toiletは各小屋で
その他 重荷を背負うと極端に足が遅くなった
山行記

<1日目>

自宅から300キロ走って畑薙ダム下の駐車場には13時過ぎに到着し、14:30発の定時バスで椹島に入った。椹島キャンプ場は芝生の上にテントが晴れて快適であった。炊事場で腰を下ろしながらゆっくりとした時間を過ごすことができたが、夕方には一雨来た。

<2日目>


椹島ロッジ・千枚岳登山口


樹林帯を緩く登る・駒鳥池


千枚小屋
雨に濡れて少々重くなったテントなど幕営道具を担いで6時20分椹島を出た。千枚岳・悪沢岳登山口の滝見橋には15分ほどのきゅりであった。取りつきは大井川の川岸をヘツル道で悪路が続きいきなり緊張させられる。来年には滝見橋の上流側に新しい吊橋が設けられるようである。さらに進むと支沢に架かる吊り橋を渡り、いよいよ本格的な登山道となり、急登の尾根をジグザグ切りながら登って行く。30分も歩くと汗びっしょりかいて、岩場に腰を下ろして休憩する先行者に追いついた。「先が思いやられるな〜」と声かけて私も一息入れる。この男女パーテイとは千枚小屋まで抜きつ抜かれつしながらの行動であった。さらに30分頑張って送電鉄塔の立つ小ピークに登り着いた。ムスコには「私を置いて先に行っても30分ごとに待つ」様に話している。何しろ昨年あたりから私の登り足は随分と劣化してムスコにはとても敵わなくなっているのである。
次の目標は小石下である。ここも頑張って登り着くと夫婦登山隊が休んでいた。三角点をカメラに収めて先を行くと岩稜帯になって少し下って行く。このコースで一ヶ所だけの岩稜帯であった。このころになると今朝小屋を早立ちした登山者が下山してきた。少し高度を下げるといよいよ長大尾根歩きが始まる。急登はないが中々高度を上げないのである。途中林道を2度ほどショートカットし持参した1リットルの飲料水も底をつくころにはコースの中間点ともいえる清水平の水場に着いた。数組のパーテイが軽食とりながら休憩していた。しっかり水分補給して気合を入れ直した。
清水平からも緩い勾配の登山道が続いていて、1時間に精々200mの高度を上げることしかできないうえ今朝の一便で椹島に入った速足の登山者に次々と追い越された。樹相が背の低い小灌木に代わるころになると駒鳥池に着いた。すでに標高2400mを超えているが、「明治40年代にこの辺りまでオオシラビソの伐採が行われ、大井川に引き落として大井川の流れに乗せて島田まで流してパルプの原料にした」という東海フォレストの看板が立っていた。駒鳥池を過ぎると長い長い尾根歩きの終了である。上方に人の声が聞こえてくると千枚小屋はすぐであった。椹島からは8時間の行程であった。コースタイム6時間となっているが6時間で歩ける登山者はそれほど多くはないのではと思った。尾根のとりつきで会った男女パーテイも私たちとほとんど同時の到着である。
千枚小屋最近建て替えられたばかりの木の香も匂う快適な小屋である。到着が遅かったので梯子で上り下りする2階に場所が与えられたのは仕方ないことであった。宿泊手続きの後は小屋前のベンチでビールと焼酎を飲みながら他の登山者と山談義を楽しんだが周囲は霧で展望はなかった。久しぶりの小屋飯にムスコは大満足である。体力の落ちた今、これからは小屋泊まり登山が良さそうである。寝袋に潜り込んでの就寝であるが神経が高ぶってそれほどよく眠れたとは言えなかった。

<3日目>


千枚岳・白峰南嶺



千枚岳の岩場に咲く


3000m超峰丸山


3度目の悪沢岳山頂




富士山・南ア北部


二軒小屋分岐・マンノー沢ノ頭


マンノー沢ノ頭三角点・二軒小屋に下り着く

千枚小屋の朝食は4時20分からであった。しっかり腹ごしらえし、デカザックを担いで千枚岳の登山道に入った。前日の8時間の行動の疲れが抜けきっていなく辛い2日目の行動開始である。急坂をジグザグ切って30分ほどで二軒小屋への分岐に着いた。分岐にザックをデポし、アタックザックで悪沢岳往復で、空身状態での登山は快適である。
千枚岳直下で森林限界を抜けてハイマツ帯になり、分岐からはわずかな時間で千枚岳山頂に着いた。来し方を振り返ると昨日歩いた千枚小屋までの長大尾根が椹島まで見下ろすことができて、その先には白峰南嶺の笊ヶ岳などが見えた。そして雲海の先には朝日を浴びた富士山が浮かんでいる。まさに南アルプスの景色である。千枚岳では休む間もなく先に進むと岩稜帯になっていた。梯子場を下ると岩場に白い花びらのタカネビランジが咲き競っていたが、花観賞は帰りの楽しみにして先を急ぐ。岩稜帯を登りきると前方に丸い山容が見えてきた。標高3000m超峰の丸山で、砂礫の道を歩いて丸山山頂に着いた。私にとっては最後の未登頂の3000m峰である。丸山からは再び岩稜帯になり悪沢岳山頂に続いていた。3度目の悪沢岳は先着した登山者で大賑わいである。山頂の一角に腰を下ろし千枚小屋で朝食に出たバナナなどを食べて休憩した。眼前の赤石岳、荒川中岳そして塩見岳など南アルプス北部の山々の展望も開けていたが東方の富士山方面には雲海が広がっていた。暫し展望を楽しんだ後山頂写真を撮って悪沢岳を後にした。千枚岳の岩稜帯のお花畑で写真を撮りながらゆっくりと二軒小屋への分岐に戻った。
二軒小屋への道は暫くはハイマツの千枚岳を巻くように進み樹林帯に入って高度を下げて行き、急坂にはロープの下がるところもあるが、概ねよく整備されていて快適トレイルが続いていた。1時間ほど歩いて小広い場所で早めの昼食を摂った。少し登りかえすとマンノー沢ノ頭(万斧沢ノ頭)で三角点もあった。マンノー沢ノ頭からも緩く下って行き、快適トレイルが続いていたが、標高2100mを切る頃になると樹林帯にジグザグ切りながら急坂を下って行く。適当に休憩を挟みながら沢の水音が聞こえる頃まで下がると、ざれた草地になって滑落に気を付けながら慎重に下ると大井川に架かる吊り橋の登山道入り口であった。吊橋の先には発電所の取水堰堤があり、堰堤の施設の脇を通って車道に出た。車道のゲー脇を抜けて二軒小屋ロッジに下り着いた。
ロッジでキャンプの手続きをした後ロッジ前の草地の上にテントを張って350ml350円のビールを飲みながら休憩した。今日のキャンプ場は4張りのテントが張られたが皆若者ばかりでここでもテント場の長老の面目躍如ではあった。夕刻前にムスコと2人、ベンチで焼酎などを飲みながら粗末ながらもしっかりと夕食を摂った。二軒小屋キャンプ場は取水堰堤から流れ落ちる水音が気になってそれほど快適キャンプ場とは思えなかった。


<4日目>


二軒小屋ロッジ・西股行き当たり

4日目の朝は雲が低く垂れこめ怪しい天気である。朝の支度をしようとテントを出ると、キャンプ登山者はすでに一張は出発済みであって、他の2組もテントを撤収中であった。やがて単独行は伝付峠方面に向かい、若いカップルは林道を椹島に下って行った。私たちもアルファ米に湯を注ぎアタックザックを担いで6時にはテント場を出発した。今日は蝙蝠尾根の徳右衛門岳往復であるが、登り5時間下り4時間のロング行程ではある。
林道ゲート脇を抜け、昨日千枚岳から下ってきた道を分けて大井川の奥に続く林道を進むと田代ダムで、その先は二軒小屋トンネルであった。トンネルを過ぎると東股に架かる橋を渡り東股・西股分岐に来た。疑うことなく西股に延びる林道に入って1キロほど進むと発電所施設があって林道は河川敷に入っていた。鋼製の仮設橋の先には道路工事のバックホーが見えた。しばらく河川敷を進んでみたが蝙蝠尾根に取り付く登山口は見当たらなかった。この頃になると雨も降りだしていて戦意喪失である。さらに昨日の激坂下りの疲労が残り、太腿がパンパンに張っている。同行の息子ももう一つ元気がなく、徳右衛門岳というマイナーな山登りにあまり興味がないのかもしれない。徳右衛門岳登山を諦めて東股分岐に戻り、トンネル付近に来るとと屈強な2人組の釣り師が登って来た。事情を話すと蝙蝠尾根登山口を教えてくれた。東股と西股分ける尾根が蝙蝠尾根で会って、西股の左岸側の尾根を蝙蝠尾根と思い違いしていたのである。地図を確認せずに西股に入ってしまった事を反省しながら再び分岐に戻り、東股林道に入ると10分ほどの所に古びた登山ポストがあった。見上げるといきなりの急登が続いていた。しかし一度諦めた登山欲は戻らず、雨の上がる様子もないので、登山口で朝食を摂って、きっぱりと徳右衛門登山を諦めた。
二軒小屋に戻って霧雨舞う中でテントを撤収し、9時半には椹島目指して10キロの林道歩きの始まりである。重いザックを担いで1時間に4キロの目標たてて黙々と歩く。いつもは先を行くムスコも遅れがちになるが激励しながら歩き続ける。林道を下る車も時々あるが止めて乗せてくれるような気配はない。1時間おきに休憩し、結局は3時間かけて椹島に着いた。
椹島でバスの乗車手続きをして30分ほど待って、13時過ぎに畑薙駐車場行きのバスに乗ることができた。
この夏もまた不安定な天気に翻弄された「親子二人連れ登山隊」ではあった。



荒川東岳
(悪沢岳)
アラカワヒガシ
(ワルサワ)
標 高 3141m 日本百名山

山 域

南アルプス中部

荒川中岳 アラカワナカ 標 高 3083m 日本百高山

山 域

ー〃ー
小河内岳 オゴウチダケ 標 高 2803m 日本百高山

山 域

ー〃ー
烏帽子岳 エボシダケ 標 高 2726m 2000m超峰

山 域

ー〃ー
登 山 記 録
登山月日 2011年8月13日〜8月16日
登山経路 第1日目 鳥倉林道ゲート〜バス〜豊口山登山口8:40/9:05〜水場11:15〜三伏峠12:25

第2日目 三伏峠7:00〜烏帽子岳8:00〜小河内岳9:40〜板屋岳13:40〜高山裏13:45

第3日目 高山裏5:15〜前岳直登6:15〜稜線7:50〜荒川前岳8:10〜中岳8:30/8:45〜荒川東岳9:50/10:25〜中岳避難小屋11:40/11:50〜稜線12:05/12:15〜直登下部13:30〜水場〜高山裏14:35

第4日目 高山裏5:45〜板屋岳7:00〜小河内岳9:20/9:35〜烏帽子岳10:50〜三伏峠11:50/12:05〜林道登山口14:10〜鳥倉林道ゲート14:50
行動時間 第1日目 3時間20分 第2日目 6時間45分 第3日目 9時間20分 第4日目 9時間5分
合計 28時間30分 (休憩時間を含む)
天  候 第1日目 晴 第2日目晴 第3日目 晴/霧 第4日目 霧・晴
メンバー カモシカ永井・親子二人連れ

情  報

アクセス 鳥倉林道ゲートまで舗装道路
トレイル 三伏峠まで 一部荒れているが歩きやすい勾配の登山道
高山裏まで 歩く人も少ないがよく整備されていて快適な登山道が続く
荒川岳まで ザレタ急登もしっかりとジグザグ切ってある 稜線上も問題ない
水場・トイレ 水場 三伏峠までの登山道 三伏峠 高山裏小屋 荒川前岳までの登山道で取れる
トイレ 各小屋にある
その他 南アルプスでも静かな登山道で見所も沢山ある好コース

山行記

第一日目

三伏峠のテント場にテント張る

鳥倉林道の途中にあるゲート前で駐車場所を探していると,運良く朝下ってきた登山者の車が出てゆくとこで、駐車場内に止める事が出来た。更に幸運は続き登山支度をしていると、ゲートの先3キロほどの登山口まで運行されている伊那バスの定期バスの運転手が声をかけてくれて、支度が終わるまで待ってくれた。歩けば1時間近く掛かるところである。料金は一人350円であった。登山口にはトイレもあり、20人ほどの登山者がバスを待っていた。折り返し伊那大島に下るバスである。今朝三伏峠から下りてきた登山者である。

登山届けを出して登山道に入る。最初は緩い登山道が続いていて、アイドリングには丁度よい。テントの入った重いザックはムスコが担いでくれて、ありがたい。ムスコも一つも嫌な顔せずにしっかりと歩いて先を行く。登山道は緩い勾配で道標も(0/10〜10/10)しっかりとあって、安心して歩ける。今日は三伏峠までの3時間半の行程と思えば気が楽で、30分に一本立ながらゆっくりと登る。7/10付近には水場もあって休憩場所もしっかりある登山道は快適であった。

正午過ぎに三伏峠に着きキャンプ場にテントを張る。水場も10分ほど下った三伏沢にあり、半日間ゆっくりと休む事が出来た。


第二日目


塩見岳をバックに烏帽子岳・荒川三山バックに小河内岳


小河内岳のハイマツ帯を下りて樹林帯に入ると随所にお花畑が広がる


板屋岳とマルバタケブキのお花畑


高山裏の避難小屋と名物管理人

今日の行程も高山裏キャンプ場までの6時間行程である。
夜明けを待って周りが出発してゆくが慌てる事はない。しっかりと朝食をとってテントを撤収、パッキングを済ませると7時の出発である。一旦三伏沢方面に下り鹿除けネットで守られたマツムシソウが群生するお花畑を見ながら稜線に出て縦走路に入る。最初のポイント烏帽子岳までは丁度1時間掛かった。今日も重いザックはムスコが担いでくれ、オヤジは有り難いばかりだ。烏帽子岳からは塩見岳が眼前に見えて、その先には間ノ岳・北岳・仙丈ケ岳・甲斐駒ケ岳などの南アルプス北部の主峰が勢揃いしている。15分ほど休憩を取って再び縦走路を行く。
烏帽子岳から少し下ると崩壊地の縁に出てひやりとさせられる。この縦走路の右側には時々大きな崩壊地の縁を通るので緊張させられる。40分ほどの前小河内岳でも一息入れて、更に小河内岳までは三伏峠から3時間もかかってしまう。11年前一晩泊まった避難小屋がすぐ前に見えて懐かしい。ココからは悪沢岳など荒川三山が良く見える。ここでもしっかりと休みを取る。結局3時間歩いて、45分も休憩を取ったことになるが、少しも慌てる事は無いのだ。
標高2800m超の小河内岳のハイマツ帯を下り、200mほど高度を下げると樹林帯に入ると、小さなお花畑が点在する快適な縦走路が続いていた。アップダウンはあるがそれほど苦になるほどでもなく、今までの休憩インターバルを大きく越えてムスコはどんどん先を行き私も後を追うのが精一杯である。小河内岳から2時間ほど歩くと展望の開けた砂地に出て絶好の休憩場所である。昼食のパンを食べながら展望と高山植物鑑賞を楽しむ。ここからは奥茶臼山や尾高山・大沢岳・兎岳などの展望が開けていた。マツムシソウやタカネグウナイフウロなどの花々が目を楽しませてくれる。
砂地の場所からは尾根をはずし三伏を巻くようになり、1時間ほど悪路が続くがそれほど荒れてもいなかった。やがて縦走路の途中に板屋岳の標識が現れる。道標には「高山裏まで1時間・小河内岳まで3時間」の案内が記されていた。板屋岳から先の縦走路もマルバタケブキやタカネコウリンカなどが咲き乱れるお花畑が連続していて目を楽しませてくれる。砂礫地にはタカネビランジやミネウスユキソウも咲いていた。
そして三伏峠から7時間弱13:45お花畑の高山裏避難小屋の立つキャンプ場に到着した。
名物小屋番で知られる管理人と軽口叩くながら歓談しながら、時間を過ごし、風もない静かな夜を過ごしたのである。


第三日目


荒川前岳の600mの急登を凌いで稜線に登りつく


崩壊寸前の前岳と中岳山頂


中岳でむらしげさん・悪沢岳を目指す


悪沢岳から見る中岳と赤石岳


悪沢岳山頂で

昨日夕方到着した単独行が私たちのテント脇のトイレの通路に確保したスペースに強引にテントを張り、朝は深夜2時にはゴソゴソ食事をしてテントを撤収3時前には荒川岳方面にヘッデンつけて出発していった。朝のまどろみを破られて大迷惑であった。
私たちも4時前には食事の支度を始め、夜明けの5時過ぎには軽いザックを背負って荒川岳目指して出発する事が出来た。ムソコも今日は重荷から開放されて嬉しそうである。20分ほどで縦走路にある水場に着き、今日の飲料水を確保する。そしてトラーバース気味に進んで、荒川前岳への直登600mの下部には小屋を出てから1時間で到着した。20分ほどは樹林帯のゴーロ道を進む。やがて森林限界に出て小礫岩のザレタ道に差し掛かる。先行した登山者が点々と見える。ココは焦らず自分のペースで登るように指示をする。軽い荷のムスコはグングンと先を行くが私も焦らず自分のペースを守って一歩一歩高度を上げてゆく。登山道は急登ではあるが、小さくジグザグが切ってあってそれほど勾配を意識する事が無い。やがて岩稜帯となり、穂高岳のザイテングラードを髣髴とさせられるが、その距離も短いものだあった。
荒川岳への稜線には1時間40分ほどで登りついて一息入れる。高山植物が満開で美しい。稜線から前岳までは20分ほどだが前岳手前付近から荒川大崩壊地の縁を行き肝を冷やす。足を滑らしたり崩壊地の縁の岩に足を乗せたら奈落の底へダイビングであり、緊張感で身震いするところだ。前岳山頂も崩壊激しく、山頂標識の半分は崩壊地に跳ねだしていていつ飲み込まれてもおかしくない状態で、4等三角点標石もむき出しになって山頂標識の根本に横たわっていた。大自然の素ざましさに驚愕しきりである。
赤石岳方面へ下る三叉路を過ぎると、荒川中岳へはわずかな時間である。丁度この辺りが千枚小屋方面から悪沢岳に登り、赤石岳を目指す登山者と交差する時間帯で、結構な登山者と行き交う。中岳山頂を踏み、岩陰で休憩していると、後ろ向きに写真を撮っている登山者に声をかけると昨日静岡県側から入山した、知り合いのむらしげさんであった。偶然のバッタリを楽しみながらしばし談笑する。
中岳の避難小屋に下り、悪沢岳を目指す。その間には大きなギャップがあり、悪沢岳山頂に立つには随分と時間が掛かりそうである。中岳から悪沢岳に掛かる辺りが荒川岳のお花畑が一番見所のところでもあるようで、マツムシソウ・タカネナデシコ・タカネウスユキソウ・ツメクサなどが見事で有ったが、少し草紅葉も始まり、秋色に染まりつつある荒川岳ではあった。中岳をグングン下り、30分ほどで最低鞍部に下る。悪沢岳への登り返しは1時間は掛かるのだろうかと思いながら先行グループの後を追う。ココもまた穂高岳のザイテンのような岩稜がしばらく続くがココも長いことではなかった。最低鞍部からの登り返しは40分ほどで中岳からは1時間少々で悪沢岳山頂に立つことが出来、拍子抜けであった。その分山頂でゆっくりと休憩を取ることにする。東側の富士山や塩見岳方面にはガスが掛かり始めていたが、赤石岳方面の展望は開けていた。昨年登った稲又山・青薙山、そして白峰南稜の笊ヶ岳なども見えて懐かしい。ココから見える主要な峰には殆んど足跡を残していて自分ながら誇らしい。
悪沢岳山頂に三角点を探したが見当たらない。40分ほど山頂ステイを楽しんだ後、ガスに覆われ始めた悪沢岳を後にする。岩稜帯はゆっくりと下り、最低鞍部からは花をカメラに収めながら中岳に戻ると悪沢岳を目指す時より20分近くも時間が掛かり、中岳避難小屋には11時半過ぎであった。小屋の横のベンチで粗末な昼食をとり、周囲がガスで何も見えなくなっては長居は無用である。前岳の崩壊地を慎重に越えて稜線でゆっくりと休憩を取る。もう来る事の無い荒川岳に別れを告げて、ザレタ急坂を下り始める。いつも下りで時間をとられるムスコも今年は快調で、私が苛立つ事も無かった。ここの急坂では朝、三伏峠を出た登山者と交差する時間帯であって5組くらいのパーテイと行き交った。1時間20分ほどで難関を下って樹林帯に入り、荒れたトラバース道を山腹をまきながら水場に着く。4リッターの水を確保して高山裏テント場には14時半過ぎに帰還した。軽い荷の往復9時間の悪沢岳で着かれも覚えることが無かったのである。
小屋でビールを購入し、更に残っていた焼酎を飲んで腹いっぱい詰めて、高山裏の夜を過ごしたのである。食事を終える頃には霧雨が舞い始めテントを濡らすがそれほど大きな降りにはならなかったのは幸いであった。


荒川岳周辺に咲く花


第四日目


お花畑の先の聖岳と霧の中の小河内岳


三伏峠に戻る・林道ゲートに戻る

昨夕は霧雨も上がった後、少し風が出たのが幸いして、フライシートの水滴もスッカリ取れていた。最後の朝は3時半過ぎには起きて食事を取り、テント撤収すると、5時半を回っていた。ココまで全て自分ひとりの作業である。ムスコは自分の仕事に(身支度・日焼対策)忙しい。小屋番もお気づきで、私を思いばかってくれる。「燃えるゴミは持ち帰らなくてもよい一緒に燃やすから出して行け」と有り難い申し出である。私だけでなく同じ場所にテント張った若者もゴミを処理してもらってありがたそうに挨拶して5時過ぎにはキャンプ場を出て三伏峠方面に向かった。
私たちは5時45分の出発である。一昨日来た道を戻るだけだから気は楽で、私は登山道脇に咲く花々をカメラに収めながら、ムスコを先にやる。「適当に休みをとりながら行くように」言うとムスコも納得である。障害はあっても道さえ間違えなければ健常者と変わりない歩きが出来るのである。小屋を上がったすぐ近くにある砂礫地にはタカネビランジが咲いていた。南アルプス固有の花である。そしてミネウスユキソウも・・・。その先の登山道脇にもマルバタケブキ・タカネコウリンカが咲き乱れている。板屋岳で一息入れて、後は山腹を巻きながら進み、一昨日休憩した砂地の開けた場所では大きく休憩を取る。今日は霧が巻いていて展望が得れれないので砂礫地の斜面に高山植物を探す。マツムシソウやタカネナデシコが見事に花開いていた。
大日陰山の樹林帯を抜け一息入れた後、小河内岳のハイマツ帯をよじ登って9時半前には小河内岳の山頂に戻る。周囲はガスで展望は開けない。ここでも大休止して次の目標は烏帽子岳である。森林限界を超えたハイマツ帯の中の縦走路の脇にも裸地や小さなお花畑があり、たくさんの花を見ることが出来た。烏帽子岳直下の崩壊地の縁には霧の中、ライチョウが迎えてくれた。烏帽子岳には10:50で予定よりは随分と早く着く。更にゆっくりと歩いて鹿除けネットに守られたお花畑を横に見ながら、高山裏からは6時間かけて、正午前三伏峠小屋に到着した。
小屋前で軽く昼食をとり、鳥倉林道への道を下る。6年目下った塩川土場への登山道は土砂崩壊により通行禁止規制されていた。登るときは随分快適に感じた登山道も下りの今日は荒れた道であることも認識できた。
林道登山口には2時間10分で下りついたが、駐車場までの林道を歩く事にする。(伊那バスの定期バスが20分後に出発するところで下山してきた登山者が10数名待っていた)被さるような岩場の下の舗装道路を45分歩いて、林道ゲートのある駐車場には15時前の到着となった。高山裏からは9時間、三伏峠からは3時間弱の所用時間であった。

今年も「親子二人連れ登山隊」、納得と満足の夏山山行を楽しむ事が出来たのである。


縦走路を彩る花々

 

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