笠ヶ岳 カサガタケ 標 高 2898m 日本百名山

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北アルプス
抜戸岳 ヌケドダケ 標 高 2813m 日本標高順59位

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北アルプス
弓折岳 ユミオリダケ 標 高 2588m 花の百名山

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北アルプス
登 山 記 録
登山月日 2009年8月13日〜15日
登山経路 第1日 新穂高6:30〜ワサビ平小屋7:50/8:20〜鏡平12:20/12:35〜弓折分岐13:40〜双六キャンプ場15:10
第2日 双六キャンプ場7:15〜弓折分岐8:35〜弓折岳8:50〜大ノマ岳〜秩父平11:05/12:00〜抜戸岳13:30/13:55〜笠ヶ岳キャンプ場15:15
第3日 笠ヶ岳キャンプ場6:25〜笠ヶ岳山荘6:45〜笠ヶ岳7:00/7:10〜雷鳥岩9:45〜水場11:25〜錫杖沢出合14:20〜槍見館16:00 
行動時間 第1日8時間40分 第2日8時間 第3日9時間35分 合計26時間15分(休憩時間を含む)
天  候 第1日 雨 第2日 晴 第3日晴
メンバー 親子二人連れ登山隊 第3日は浅草から来たSさんと同行

情  報

アクセス 新穂高登山者駐車場
トレイル 新穂高〜双六〜笠ヶ岳迄は人気の登山道 クリヤ谷コースは急坂・悪路の連続
水場・トイレ 鏡平までは随所にあるその先はテント場・山小屋で クリヤ谷コースはコース中間から先で随所
その他 クリヤ谷コースは厳しいトレイルが続く

山行記

第一日目


花の百名山弓折岳に咲く

新穂高のバスターミナル・登山基地に来ると霧雨が舞い始めた。今日の天候は最初から期待はしていないが、それでも一縷の望みを持ってきたのである。しばらくすると雨も止み、橋を渡って左俣林道に入る。お盆休みの初日で続々と登山者が歩を進めている。
10年前に下った笠新道登山口で一息入れ、すぐ先のワサビ平の小屋で珈琲を飲みながら朝食をとる。
再び歩き始めて5分もしないうちに本格的な雨が降り出して慌てて雨着を装着した。
奥丸山への道を右に分け、本格的な登山道小池新道に入る。雨は時に激しく降りつける。雨水が登山道を走り始める中黙々と歩く。休憩もままならないのである。ムスコも愚痴の一つもこぼさず歩いてくれるのが嬉しい限りだ。
イタドリガ原などの休憩ポイントで時々腰を下ろしながら鏡平の小屋には12時過ぎての到着となった。外のベンチは雨の中、小屋の前は登山者で溢れ休憩もままならず、立ったまま昼食をほうばるのであった。
僅かの休憩で弓折分岐を目指す。小屋のすぐ上は弓折中段というお花畑になっていた。ここまで来て高山植物を観賞する登山者も多いのだろうかと思う。雨の中クロユリ等の花が目を楽しませてくれる。小屋〜1時間で弓折分岐に着く。雨も小止みになって一息つくことが出来た。稜線に出てハイマツ帯やお花見平・クロユリベンチなどを通り、双六のテント場には15時過ぎに到着した。テントを張っていると大粒の雨が降り出して大慌てする。
テントの中は濡れたザック・雨着・登山靴などで悲惨な状態であるが、とりあえず居場所を確保してホッとする。小屋で仕入れたビールと少々の焼酎を飲みながらムスコと二人で談笑しながら時間を過ごす。17時過ぎには夕食を作り、大雨のテントの外に気を揉みながらシュラフの中にもぎり込むのであった。


第二日目


天気回復した中、双六のテンバを後に笠ヶ岳に向かう


双六キャンプ場を振り返る


これから先は常に槍穂高連峰を見ながらの稜線漫歩が続く

二日目の朝は雨も上がって素晴らしい天気になっていた。食事を済ませテントを撤収パッキングを済ませると7時過ぎの出発となった。昨日は雨と霧の中で何も見えない稜線であったが素晴らしい景色が広がっていて嬉しい限りだ。槍ヶ岳の黒い巨体を眺めながら弓折分岐には1時間ほどで戻る。そして僅かの時間で弓折岳山頂に立つことが出来た。弓折岳山頂からはこれから行く抜戸岳方面がまだまだ遠くに見える。
大ノマ乗越まで一旦下り急坂を登りきればばコースの中間点とも言える大ノマ岳に立つ。


弓折岳と大ノマ岳山頂

大ノマ岳を30分も下るとこのコースの最低鞍部に着く。高層湿原になっていて、すぐ上は秩父平のカールである。時間も11時を回っているので昼食休憩をとることにする。湿原の下部に水場を探すが探し当てることは出来なかった。ここは10年前の縦走時にも休んだことを覚えている。大ノマ岳で追い越した石川県の夫婦登山隊も再び追いついて並んで腰を下ろして山談義を楽しみながら昼食をとった。1時間もの大休止である。
お花畑の広がる秩父平の急坂を稜線に登りきると笠が岳が見えるのであるが、残念ながらこの辺りでガスが上昇してきて展望が得られなくなった。10年前にムスコが指を裂傷した岩場を越えハイマツ帯の中の縦走路を行くとやがて日本百高山・標高順59位の抜戸岳である。縦走路からは30mほど駆け上がり、日本百高山で最後に残した山頂を踏むことが出来た。(前回の縦走時に登頂扱いにしていた)


百高山は正真正銘完登を果たす

抜戸岳を下りて再び笠ヶ岳への縦走路を行く。僅か先が笠新道の分岐で標識には「笠ヶ岳まで70分」の所用タイムとなっていた。まだまだ先であるが時間もたっぷりあるのでゆっくりと行く。
お花畑が広がる広場で休憩を取っていると単独の女性登山者が声かけてきた。東京から来た女性で一緒に歩きながら山談義を楽しむ。そして明日のクリヤ谷を一緒に下る約束をする。
ガスが晴れない中、15時過ぎに漸く笠ヶ岳テンバに到着した。テントを張り終える頃にはガスも晴れて笠ヶ岳も姿を現した。この時期水場の水も涸れてはいたが小屋には無料の飲料水が有って助かった。岩場に滲み出る水も時間をかけて2リットルほど採取することが出来た。

ビールと焼酎を飲みながら夕焼けに染まる穂高岳の勇姿を眺めながら至福の時間を過ごす。

そして昨日とは打って変わった静かな笠ヶ岳のテンバの夜を過ごすことが出来たのである。

(このテンバの難点は小屋まで15分近く掛かるのでトイレが遠いことだ)


笠ヶ岳テンバ


第三日目

 
今日もテント場の出発は6時半近くになっていた。クリヤ谷を一緒に下るSさんとの約束は笠ヶ岳山荘を7時出発である。山荘には6:40に到着し、6:45の出発となった。私が先導し、ムスコを挟んでSさんがしんがりを務めてくれることになった。
7:00には笠ヶ岳山頂に到着した。5人ほどが展望を楽しんでいたが、昨日大ノマ岳から励ましあって歩いてきた石川県の夫婦登山隊は笠新道回りで下って行くところであった。
10年ぶりの笠ヶ岳山頂に立ちムスコは感激の涙を流している。それを見ると私の瞼も熱くなるのであった。長い下りを考えると僅か10分の滞頂でクリヤ谷への道に入った。


笠ヶ岳への来し方とクリヤ谷への稜線

山頂直下は岩礫・岩屑の重なる道で慎重にならざるを得ない。ゆっくりゆっくりと下る。30分ほど稜線を下ると急坂のザレた山腹を下るようになり砂礫地にお花畑が広がるようになる。笠が岳の代表花はミヤマダイコンソウであるが随所に見ることが出来る。ここら辺りでは笠新道の単調な道よりは良い道を選んだと思うのであるが、やがてハイマツ帯の中の道となる。


ハイマツ帯から笠が岳を望む  クリヤの頭付近から見る笠が岳

ハイマツ帯に入って休憩を取る下る足が遅くてムスコはついてくるのが精一杯で後ろについてくれたSさんには申し訳なく思うのだが、Sさんはニコニコと対応してくれて有り難いばかりだ。クリヤの頭を後から巻いているのであるが巨石の中の悪路のアップダウンが続き少しもペースが上がらない。そんな中トレランスタイルの若者3人が息せき切って登ってきた。「ここまで3時間だ」と言いながら笠が岳山頂目指して行った。すぐ先の岩場でも中年の単独行が日帰りすると休んでいた。結局クリヤ谷を登ってくる登山者はこれ等の者を含めて12人ほどであった。最初のチェックポイントは雷鳥岩であるがコースタイム2時間10分のところを30分ほど余分にかかってしまったが、それほどの焦りはない。

雷鳥岩を過ぎるとクリヤ谷への前面(蒲田川側)に出て草付と笹原の急さかとなる。依然として悪路の連続で少しもペースが上がらない。対岸には西穂高ロープウエイも見えてくる。やがて左側にクリヤの頭から流れ下った小沢が現れる。第二チェックポイントの水場である。11:30の到着であるから笠が岳山頂からは4時間半も掛かったことになる。昼食休憩をとろうとしたが登りの登山者が行き合わせ休憩場所を譲らざるを得なくなって、結局そのまま小一時間下る。良い休憩ポイントが見つからないので少し広くなった登山道に腰を下ろし12:30に昼食休憩とする。Sさんは小屋の弁当を広げ、私達は素早くラーメンを作って食べた。中々先に見えない道で少々焦りも感じ始める頃であった。

30分ほど休憩し再び悪路の中を下り始める。ここまで標識は一つも診ることがなかったがコメツガの幹に「槍見館まで3.9キロ」の標識をはじめて見ることが出来た。しかしまだまだ先が長いことを知り、がっくりくるのである。クリヤの頭から流れる小沢を越える頃から右手には錫杖岳の岩峰を見るようになる。やがてクリヤ谷の本流を徒渉する。水量少なく難なく渉ることが出来た。すぐ先の錫杖の岩小屋には渓流釣りだろうかテントが張ってあった。再び渡渉をし、河岸を行くと2005年錫杖岳に登った分岐点の錫杖沢出合であった。

ここまで来ればと思っていたが、私はこの先1時間半ほど掛かることを知っている。Sさんは「もう30分もあれば槍見館に出られるでしょうか」と声かけるがわたしは返答のしようがなかったのである。ここからも悪路の連続で疲労が蓄積したムスコのペースは更に遅くなり、私のいらいらは募るばかりだ。Sさんの焦りも伝わってくる。

3度目の徒渉地点ではムスコが足を滑らせ岩の上にしりもちをつく。半べその息子を励ましながら「あと少し!あと少し!」と急かせるのであった。対岸に新穂高に向かう車の音が聞こえるようになると本当にあと少しである。しかし先を行く私に後から声が掛かる。ムスコがグローッキーになったようで登山道に腰を下ろしてしまったのである。ずーとムスコをサポートしてきてくれたSさんが残りのサプリメントを食べさせてくれ一息つく。私は車の回収を考えて先に下ることにして残り300mほどを急いで下る。槍見館前の登山口には16:00丁度の下山となった。笠が岳からは実に9時間を要したことになる。Sさんには済まない思いがこみ上げてくるのであった。

国道手前の道端にザックを預け対岸のバス停・中尾高原口に来ると、運良く5分後に新穂高行きのバスが来た。2キロほど先の新穂高登山者駐車所まで行き、車を回収し、槍見館まで戻ると遅れて下りついたSさんとムスコが方で息をしながら清涼飲料を飲んでいるところであった。栃尾温泉の川原にある露天風呂で汗を流し、Sさんを松本駅まで送ってお別れしたのである。

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